2016年10月30日日曜日

高江の事件は社会に渦巻く憎悪を考えさせる


 沖縄県東村高江にヘリパッド建設するために警備している警察官・機動隊員が建設に抗議する市民に対して、「土人」などの暴言をはいてしまった問題は、国内に根深く渦巻いている差別的な感情が、今、沖縄の高江という場所で顕著にあらわれてしまったかたちとなったといえよう。

 しかし、この事件がおきてしまった背景や経緯は慎重に考えていく必要がある。

 大阪府の松井知事から沖縄県東村高江で警備する警官をねぎらう発言があったが、その発言に公人という責任ある知事としては不用意なところがあったことと警官の発言の社会的な意味を充分にとらえていないと受けとめられても仕方がなかった側面があり、松井知事に対する批判が多くあった。しかし、松井知事の発言は、沖縄の高江で工事の警備に当たる警官の立場がどうなっているのかを明らかにもした。

 警官がこのような暴言を吐いてしまったのは、警察官であり、警察官という仕事の責任があるものが、高江という今、安全保障上の政策をめぐり、賛成と反対の最前線として摩擦が生じている場で、市民に向けられた言葉としては不適切であることは歪めない。

 しかし、安全保障上の国策をめぐり、賛成と反対の意見の間で摩擦が生じている最前線の場所に、そこの警備の任務を受け、摩擦の中で当事者として仕事をしなければならない警察と警官の立場は、理解されなければならないだろう。

 それは、警察は、国・政府にまかされて、そこで警備の任に当たっているということだ。
ここにヘリパッド建設することを決める過程に、警察は関与していない。
そして、建設を請け負っている事業者の作業員や警備会社から派遣されている警備員もこの建設を決める過程に関与していない。

 例えば、ネットでみられる安全保障上の政策に対して意見を持つ「ネトウヨ」と「パヨク」といって名指されて、意見の対立が生じる間とは違う。
今回の事件は、工事の警備をするために派遣された警察官と建設に抗議する市民の間で生じた。安全保障上の意見を持つものの間で生じた摩擦ではなく、安全保障上の政策のために工事の警備をする警察官と米軍施設の整備と豊かな自然を開発することに抗議する市民の間で生じた事件である。このことを忘れてはならない。

 こういった前提を踏まえた上で、この警察官の暴言が当事者である警察官個人の不適切な発言であるのはその通りであるが、そうではなくどういった意味があるのか日本の社会を見つめる上で読み取る必要があろうという意見がある。ヘイト・スピーチやヘイト・クライムといった憎悪が世界中でみられ、日本でも大きな問題となっている。現在の日本の社会にある憎悪の感情を考える必要があるためだ。この事件を通しても読み取れるという意見である。

 問題発言をしてしまった警官は、粘り強い抗議活動をする市民の活動に対応する仕事をしているために、感情的になってしまったのかもしれない。抗議活動を続ける市民の中でも感情的になっている側面があろう。だからこそ、市民と警察の間で摩擦が生じている現場で、このような事件がおきたのだろう。彼らが個人的にヘリパッドの建設の是非についてどういった意見を持っているのかは分からない。そして、警察官として、ヘリパッド建設の是非について意見を述べることが出来る立場ではない。

 こういった立場の警察官の不適切な発言は、その言葉の意味を日本の社会では憎悪を含んだ意味であると読み取れる表現であったために、この事件を通して、現在日本社会で認識される大きな問題を考える必要があったといえよう。




〈元となった私のツイート〉

〈参考〉
別の機動隊員は「シナ人」と暴言 北部訓練場、抗議市民に(琉球新報)
沖縄ヘリパッド 「土人」発言機動隊員に「出張ご苦労様」(毎日新聞)
反対派の機動隊員に対する罵詈雑言を聞いたことがあるか? 「土人」発言招いた沖縄の異常空間(産經新聞)
機動隊員の沖縄差別は「土人」発言だけじゃない!「バカ」「シナ人」…差別意識を助長させる安倍政権(リテラ)
差別発言抗議から「機動隊撤退」が消えた理由 沖縄県議会攻防の舞台裏(沖縄タイムス)
知事、県警に抗議 機動隊員差別発言 「到底許されぬ」 (琉球新報)
[機動隊 差別発言を問う]沖縄へのまなざし露呈 親川志奈子さん(琉球新報)
茂木健一郎さん、尾木直樹さんも批判「戒め全くない」 大阪府知事の差別擁護発言(琉球新報)
「報道やり過ぎ」「反対派も過激」 大阪府知事 差別擁護に批判 背景に基地集中容認(琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-379240.html