2016年10月30日日曜日

高江の事件は社会に渦巻く憎悪を考えさせる


 沖縄県東村高江にヘリパッド建設するために警備している警察官・機動隊員が建設に抗議する市民に対して、「土人」などの暴言をはいてしまった問題は、国内に根深く渦巻いている差別的な感情が、今、沖縄の高江という場所で顕著にあらわれてしまったかたちとなったといえよう。

 しかし、この事件がおきてしまった背景や経緯は慎重に考えていく必要がある。

 大阪府の松井知事から沖縄県東村高江で警備する警官をねぎらう発言があったが、その発言に公人という責任ある知事としては不用意なところがあったことと警官の発言の社会的な意味を充分にとらえていないと受けとめられても仕方がなかった側面があり、松井知事に対する批判が多くあった。しかし、松井知事の発言は、沖縄の高江で工事の警備に当たる警官の立場がどうなっているのかを明らかにもした。

 警官がこのような暴言を吐いてしまったのは、警察官であり、警察官という仕事の責任があるものが、高江という今、安全保障上の政策をめぐり、賛成と反対の最前線として摩擦が生じている場で、市民に向けられた言葉としては不適切であることは歪めない。

 しかし、安全保障上の国策をめぐり、賛成と反対の意見の間で摩擦が生じている最前線の場所に、そこの警備の任務を受け、摩擦の中で当事者として仕事をしなければならない警察と警官の立場は、理解されなければならないだろう。

 それは、警察は、国・政府にまかされて、そこで警備の任に当たっているということだ。
ここにヘリパッド建設することを決める過程に、警察は関与していない。
そして、建設を請け負っている事業者の作業員や警備会社から派遣されている警備員もこの建設を決める過程に関与していない。

 例えば、ネットでみられる安全保障上の政策に対して意見を持つ「ネトウヨ」と「パヨク」といって名指されて、意見の対立が生じる間とは違う。
今回の事件は、工事の警備をするために派遣された警察官と建設に抗議する市民の間で生じた。安全保障上の意見を持つものの間で生じた摩擦ではなく、安全保障上の政策のために工事の警備をする警察官と米軍施設の整備と豊かな自然を開発することに抗議する市民の間で生じた事件である。このことを忘れてはならない。

 こういった前提を踏まえた上で、この警察官の暴言が当事者である警察官個人の不適切な発言であるのはその通りであるが、そうではなくどういった意味があるのか日本の社会を見つめる上で読み取る必要があろうという意見がある。ヘイト・スピーチやヘイト・クライムといった憎悪が世界中でみられ、日本でも大きな問題となっている。現在の日本の社会にある憎悪の感情を考える必要があるためだ。この事件を通しても読み取れるという意見である。

 問題発言をしてしまった警官は、粘り強い抗議活動をする市民の活動に対応する仕事をしているために、感情的になってしまったのかもしれない。抗議活動を続ける市民の中でも感情的になっている側面があろう。だからこそ、市民と警察の間で摩擦が生じている現場で、このような事件がおきたのだろう。彼らが個人的にヘリパッドの建設の是非についてどういった意見を持っているのかは分からない。そして、警察官として、ヘリパッド建設の是非について意見を述べることが出来る立場ではない。

 こういった立場の警察官の不適切な発言は、その言葉の意味を日本の社会では憎悪を含んだ意味であると読み取れる表現であったために、この事件を通して、現在日本社会で認識される大きな問題を考える必要があったといえよう。




〈元となった私のツイート〉

〈参考〉
別の機動隊員は「シナ人」と暴言 北部訓練場、抗議市民に(琉球新報)
沖縄ヘリパッド 「土人」発言機動隊員に「出張ご苦労様」(毎日新聞)
反対派の機動隊員に対する罵詈雑言を聞いたことがあるか? 「土人」発言招いた沖縄の異常空間(産經新聞)
機動隊員の沖縄差別は「土人」発言だけじゃない!「バカ」「シナ人」…差別意識を助長させる安倍政権(リテラ)
差別発言抗議から「機動隊撤退」が消えた理由 沖縄県議会攻防の舞台裏(沖縄タイムス)
知事、県警に抗議 機動隊員差別発言 「到底許されぬ」 (琉球新報)
[機動隊 差別発言を問う]沖縄へのまなざし露呈 親川志奈子さん(琉球新報)
茂木健一郎さん、尾木直樹さんも批判「戒め全くない」 大阪府知事の差別擁護発言(琉球新報)
「報道やり過ぎ」「反対派も過激」 大阪府知事 差別擁護に批判 背景に基地集中容認(琉球新報)
http://ryukyushimpo.jp/news/entry-379240.html


2016年8月31日水曜日

安倍マリオはサプライズだった。

 8月21日夜(日本時間22日朝)、ブラジル、リオデジャネイロ市内のマラカラン競技場でオリンピックの閉会式がおこなわれた。閉会式の一幕で次のオリンピック開催国・開催地である日本の東京にオリンピック旗が引き渡され、君が代の演奏と日の丸がフィールドの上にあらわれた。会場には東京のプロモーションビデオが映し出された。そして、次の東京オリンピックを紹介するショウがおこなわれた。この会場でおこなわれた東京のショウの冒頭で安倍総理大臣の登場とその演出が波紋を呼んだ。テレビなどで閉会式の模様をライブでみていた人も多いことだろう。この安倍総理の登場する演出について、どう感じただろうか。

 波紋を呼んだ演出では、東京からリオデジャネイロ(リオ)にリレーしてボールを届けるというミッションの中、そのミッションを受けた一人として安倍総理が任天堂のゲーム(スーパーマリオブラザーズ)の人気キャラクターのマリオに扮して登場した。安倍総理は、東京からリオに向かうのに急いでいたみたいだ。日本の東京からブラジルのリオまでトンネルを掘って、マリオはリオに向う。そのトンネルに飛び込んだ。そして、リオの閉会式をしている会場では、フィールド中央におかれた土管からマリオが登場する。土管から登場したマリオは衣装の服と帽子を脱ぐと、その人はミッションの赤いボールを運ぶ安倍総理大臣だった。閉会式をしている会場のフィールドでは、東京のショウが繰り広げられる。最後に、「SEE YOU IN TOKYO」という言葉の後、安倍総理から赤いボールは、元オリンピック代表選手で、水泳で活躍したこのリレーの先頭でもあった北島康介さんに手渡された。そして、会場では花火が打ち上げられていた。


 オリンピック・パラリンピックの開会式と閉会式は、近年のオリンピックでは特別の注目がそそがれている。どのような開会式だったか。どのような閉会式だったか。オリンピック・パラリンピックの始まりと終わりを告げる開会式と閉会式は、そこでおこなわれるショウとしての魅力が話題になるためだ。だから、オリンピック・パラリンピックの開催地の主催者は、力いれた開会式と閉会式を準備して、執り行っている。次のオリンピック・パラリンピックの開催国・日本の開催地・東京も、リオでの閉会式のショウを準備し、披露した。

 安倍総理がキャラクターのマリオに扮して登場するという演出は、その是非をめぐり演出を見た者の間を賑わした。

 安倍総理が閉会式の東京オリンピックのショウに登場したということに対する意外性を声にした人がいる。安倍総理がマリオに扮して登場した演出の是非は、この意外性を好意的に評価する意見と、批判的に評価する意見があった。

 安倍総理の扮するマリオに対する批判とは、そのショウに対する批判と安倍総理に対する批判をわけて考える必要がある。そして、オリンピックへの批判と、開催地域ごとにある個別的事情が背景として生じる批判がある。

 例えば、今回のブラジルのリオでオリンピックが開催される直前に、日本のメディアでは、リオの治安に不安があることが報じられていたことを思い出すのもよいだろう。


 では、安倍総理が扮するマリオの演出に批判がおきた背景とはどういったものなのだろうか。



 任天堂のゲームのキャラクターマリオに扮して、東京から、日本の裏側にあたるブラジルのリオデジャネイロにトンネルを掘って、そのトンネルの中に飛び込んで、会場に現れるという演出だった。この演出をみてどんなイメージを抱いただろうか。この演出に対して、メルトスルーをイメージしたり、違和感を感じたという意見がある。

 メルトスルーと重なるようなイメージを持った人の中には、安倍総理の東京電力福島第一原子力発電所関係の発言に批判的な意見を持つ人がいる。2013年ブエノスアイレスでのIOC総会で東京にオリンピックを招致するためにプレゼンをした。そのとき安倍総理は演説をしている。演説の中で、安倍総理が東京電力福島第一原子力発電所の港湾内で汚染水は、「アンダーコントロール」されていると説明したことに関して、事実認識が誤っているという意見がある。そのために齟齬が生じている。
メルトスルーと重なるようなイメージを抱いた人は、安倍総理のIOC総会での演説が念頭にあったのだろう。



 オリンピックは、夏と冬にそれぞれ4年に一度競技大会が開催される。そして、パラリンピックも開催される。オリンピックの開催には、大会をおこなうための費用がかさむようになってきた。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催では、日本国政府と東京都がその費用を負担することになっている。政府と開催地域がオリンピックの計画には、招致活動から開催が決定して、実際に開催するために、関与が大きくなっている。任意の実行主体がオリンピックを開催したいから自主的に応募して、計画を実行するというわけにはいかないようだ。オリンピックの開催地になりたい地域の長には開催地の長ということから責任や権限があり、そして政府の協力をえながら、共同して責任持って計画して、実行している。そういうこともあり、オリンピックの競技観戦に、政府の要人が姿を現しても驚かないだろう。

 しかし、オリンピック憲章には、オリンピックの政治利用を許さないと定めていることから、今回のリオデジャネイロオリンピックでの安倍総理がゲームのキャラクターのマリオに扮して会場に登場するといった演出が、オリンピックの政治利用にあたるという批判がある。

 ところで、リオデジャネイロオリピックの閉会式には、都知事になったばかりの小池百合子東京都知事がいっている。小池都知事は、オリンピック旗を受けとる役を果たしている。前の都知事は、舛添要一さんである。舛添さんは、在任中に政治資金の公私混同問題が明らかになって、都知事を辞任している。舛添さんが都知事をまだ続けているのであれば、小池都知事ではなく、舛添さんがあの場に姿を現すはずだった。舛添さんの政治資金の公私混同問題が明らかになったのは、4月、5月だった。6月21日付の辞職願を提出したのは、6月15日。東京都知事選の投開票日は7月31日。小池都知事は、7月31日に選ばれたばかりだった。

 小池百合子知事は今月(8月)2日、就任記者会見をしている。その場で、東京オリンピック・パラリンピックの費用の妥当性を検証する調査チームを設置する意向を示している。この調査チームでは、予算の軽重、準備体制、工程表の妥当性ということを第三者の目も借りて検証、チェックしていきたい。そして、東京都と関連省庁の責任分担体制も明確にしていきたいと、表明している。


 報道によると、安倍総理がマリオに扮して登場するという演出のアイデアは、4月ごろまでに固まり、閉会式直前まで、「極秘扱い」で国際オリンピック委員会(IOC)との調整が続いた。(2016年8月28日東京新聞朝刊)

 舛添都知事の在任中にこのアイデアが固まっていたことになる。つまり、舛添都知事が在任中に、安倍総理が人気キャラクターに扮してミッション達成するためにリレーして閉会式をおこなっている会場に登場するというサプライズのアイデアは固まっていたことになる。

 今回、次の東京オリンピックのショウの費用は、リオ・パラリンピックの演出の費用とあわせて、約12億円になることが分かったと報じられている。


 このように安倍マリオ批判がおきた背景を少しおってみた。
 背景を追ってみてみると、マリオというキャラクターが直接メルトスルーというイメージに結びつくわけではないだろう。閉会式に何らかのショウを企画しているとき、なぜマリオを選んだのかというそのアイデアの善し悪しを問題にする必要もあるだろう。企画やショウの出来がよかったのか・悪かったを見直す必要も当然あろう。

 それがブラジル・リオデジャネイロに続いて、日本・東京でオリンピック・パラリンピックを開催する開催国・開催地のミッションとして必要となるだろう。





<安倍マリオの対する反応で注目されたつぶやきの例>

佐藤圭東京新聞記者
「まさかのアベマリオ」安倍首相、マリオの格好で土管から出現 リオオリンピック閉会式 http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/21/rio-mario_n_11646846.html … 「東京からリオへワープ」ということですが、私はメルトスルーを想起した。原発事故で高温の核燃料が地中にのめりこみ、地球の裏側へ…リオ・シンドローム!

佐藤優莉朝日新聞記者
安倍マリオを見た時の「うゎ…」という違和感を一番的確に表してくれているのはこの記事だな…。 日本の恥! リオ五輪閉会式で安倍首相がアスリートをさしおいて政治宣伝…背後に官邸と組織委のグロテスクな思惑 http://lite-ra.com/2016/08/post-2515.html … via @litera_web





【NHKリオ】2020へ期待高まる!トーキョーショー 



<記事>
「まさかのアベマリオ」安倍首相、マリオの格好で土管から出現 リオオリンピック閉会式(huffingtonpost)

日本の恥! リオ五輪閉会式で安倍首相がアスリートをさしおいて政治宣伝…背後に官邸と組織委のグロテスクな思惑(リテラ)

閉会式の東京パフォーマンスにまたも左翼メディアがかみついた…朝日記者「安倍マリオに違和感」東京記者「メルトスルー想起」(産經新聞)

安倍マリオ」露骨な政治利用 理念なき五輪の狂騒(東京新聞)

牧太郎の青い空白い雲
/585 「安倍マリオ」は詐欺師?の口上「いまだ道半ば」発言をやめろ!(サンデー毎日)

リオの演出は総額12億円(共同通信)

小池都知事、改革本部設置を表明(共同通信)

舛添氏が辞職願=21日付、政治資金流用で引責-都議会の不信任前に(時事通信)

小池知事、都に迫る 五輪施設費「再度の検証」(日本経済新聞)


2016年8月2日(火)
小池百合子新都知事。初登庁。就任記者会見。
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/governor/governor/kishakaiken/2016/08/02.html

2016年8月28日日曜日

蓮舫議員が感じたことと報道が伝えた間には

 今月の23日、蓮舫さんが日本外国特派員協会で記者会見をおこなった。民進党代表選に向けた決意表明の中で、民進党の代表になったら、それ以前との違いがあるものにしたいと最後にユーモアを交えて結んだ言葉がメディアに取りあげられる機会が多かった。

 記者会見の場で、蓮舫さんは次のように結んでいる。
「ここが大事なのでぜひ編集しないでいただきたいのですが、私は岡田克也代表が大好きです。ただ、1年半一緒にいて、本当につまらない男だと思います」。
そして、こう続けた。「人間はユニークが大事です。私にはそれがあると思います」。
その言葉で会場では居合わせた者の笑いを誘った。

 岡田さんを個人的に知らなくたって、いろいろなメディアを通して岡田さんを知っていれば、堅物のイメージがあり、笑いを積極的にとりにいこうとするようなことはしないだろうって、誰だってそういったイメージを岡田さんに持っていることでしょう。だから、蓮舫さんの結びの言葉が笑いを誘うことにもなったのでしょう。

 しかし、なんか違和感が残る。この言葉は決意表明というより、決意表明の結びにユーモアを交えて、今の民進党と現岡田代表と私が代表になったらと、その時の民進党の違いを強調する結果となっている。

 自分のツイッターで、岡田代表への敬意を表しましたとつぶやいている。つまり、自分で告白している通り、岡田代表のこと、蓮舫さんはどう思っているのかなっていうような違和感も残るでしょう。「私は岡田代表が大好きです」と断った後に、続く言葉が、「ただ」という順接ではなく次に接続する言葉を選び、「…、本当につまらない男だと思います」と続けたわけです。

 「人間にはユーニークが大事です。私にはそれがあると思います」とさらに続けた。誰だって、人間にはユニークが必要だろうということに共感するわけですが、岡田さんにはそれはなくて、私にはあるって読める。

 確かに岡田さんは堅物なイメージがあります。蓮舫さんの記者会見での結びの言葉には、蓮舫さんの言葉でいえば、「ユニーク」さもあるでしょう。しかし、その言葉は、ただ「ユニーク」だけで流れていかない意味を読み取ることが出来る。メディアやネットでいろんな人がこの発言を話題にしましたが、それは、私の言葉でいえばこういった「違和感」の表れではないでしょうか。


 蓮舫さんとしては、最後にユーモアを交えていったことばかりが注目されないで、記者会見で話した政策的なことにももっと注目してほしかったかもしれません。

蓮舫さんは、記者会見の後、自身のTwitterで次のようにつぶやいている。

外国人特派員協会で講演する機会をいただきました。限られた税金の再分配を「人」へ。既得権益を守る産業政策などの見直しをする行革を。私が優先したい政策を話してきました。




〈参考〉

日本外国特派員協会での蓮舫さんの記者会見
Renho:"Can Renho rebuild the Democratic Party?"
2016/08/23

蓮舫議員のTweet


<記事>
民進 蓮舫氏「党のイメージ思い切り変えていきたい」(NHK)

蓮舫氏「岡田代表が大好き。ただ、本当につまらない男」 民進党代表選に向け会見(huffingtonpost)


蓮舫代表代行「表現の自由、安倍晋三政権ではるかに後退した」(産經新聞)


「岡田氏はつまらない男」=蓮舫氏(時事通信)


【全文】蓮舫氏「脱・昭和で私が未来を作る」“批判しかできない民進党”の改革を宣言(ロイミー)



「この記事の元になった私のTwitterでのつぶやき」






2016年8月17日水曜日

SEALDsというグループが解散した

 SEALDs(シールズ)が8月15日にその活動を終えた。彼らの言葉は解散だった。学生が、SEALDsというグループを2015年5月に結成して、活動を続けてきた。SEALDsの前身は、SASPL(サスプル)というグループで、2013年12月に結成された。
 彼らは、これからはSEALDsとしてではなく、個人としておのおのの活動をしていくといっている。
 彼らの活動がどのようなもので、どんなことを主張してきたのかを知らなくても、テレビや新聞などに取りあげられることもあったことで彼らのグループ名を聞いたことがある人もいるだろう。そのことが示すのは、それほどのことがあったといえよう。
 彼らが一体何を成し遂げたのかといった側面で彼らの活動を評価しようとすると、彼らが何を主張して、どんな活動をしてきたのかを知らないと評価しにくいだろう。彼らが、研究者として研究を発表したわけでも、言論人として他の言論人と違う何かを主張したわけでもなかろうし、創作物をつくる作者としての卓越した固有性を有したわけでもなかろう。彼らはSEALDsというグループとして活動してきた。もちろん、それぞれ個人としてのおのおのの活動もその間あったことだろう。
 彼らは、社会的に注目される出来事になったのだ。彼らの言葉を引用すれば、彼らは「SEALDsというムーブメント」を引き起したということになる。その影響力がどのような影響を持ったかということを評価するのは難しいが、影響力を持ったことは間違いない。
 彼らのことと、彼らの活動を振り返った時に、じゃあ、彼ら、SEALDsの活動とは何だったんだろうということになろう。彼ら、そこに集った学生は、「民主主義ってなんだ」といって、路上に飛び出して、活動を発展させていった。
 率直にいえば、彼らの活動とは、彼らの民主主義体験だった。そう考えると、彼らのことが分かりやすくなろう。彼らの民主主義体験を通して、社会的に、政治的には評価を後に送るとしても、彼らが影響力を持った。彼らがおこした出来事とは、彼らの民主主義体験を通して、彼らの民主主義体験が影響力を持ったということだろう。



「民主主義って何だ?」「これだ」
というコールをSEALDsは国会前でしていた。

 この言葉を聞いて、彼らのいう民主主義とは、彼らがしているこのことをいうのかという謎が彼らをみるといつも私の心の中にあった。
 彼らを最初に見かけたのは、彼らが国会前でデモンストレーションをしている姿だった。私は国会前にいって、彼らの活動を直接見たわけではなく、ビデオ映像におさめられた彼らの姿だった。
 彼らがいう民主主義とは、彼らが国会前でする活動を示していっているのかと悩んだりもした。
 SEALDsの活動を見かける度に、これが彼らのいう民主主義なのかという言葉が私の中にはあった。
 その後、彼ら姿を国会前だけではなく見かけることになった。市民活動家の横にいる彼らの姿を見かけた。大学の研究者の横にいる彼らの姿を見かけた。そして、国会議員の横にいる彼らの姿を見かけた。いや、彼らの横に、そうしたいろんな人びとがいた。
 SEALDsの中心的なメンバーの一人といってもよいだろう、奥田愛基さんは参議院特別委員会の公聴会に公述人としてよばれ、意見陳述を求められた。
 彼らのグループ、SEALDsには、リーダーはいないそうだ。物事は合議的に決めてきたようだ。
 彼らの活動には、彼らが若いからの青臭さがあり、彼らが若いからの感性の鋭さがあったに違いない。彼らSEALDsの活動が発展していく度に、それを彼らより歳を重ねている我々は意識したのではないか。
 SEALDsの名前や彼らの活動を見かける度に、どこが新しいのかと考えた者はいないだろうか。彼らは、今までの市民活動の中に、新しい息吹を持ち込もうと企てたのだ。



〈参考〉

SEALDs

SEALDs KANSAI 解散記者会見 2016.8.13(IWJ)

SEALDs (自由と民主主義のための学生緊急行動)解散記者会見2016.8.16(IWJ)

市民発の政治「始まったばかり」 解散シールズ、自然体の言葉で(東京新聞)

SEALDs解散、選挙を変えたか 続く市民運動に期待(朝日新聞)

学生団体「SEALDs」が解散―安倍政権による改憲を防げるか?ボールは市民と野党の側に(志葉玲)


この記事の元となったつぶやき




2016年8月9日火曜日

夏祭りの季節



 私がまだ幼いとき、私にとっての祭を思い出すと、神社や寺でおこなわれる縁日や歴史のある商店街でおこなわれるイベントだった。まだ幼かった私にとっては、祭は、出店が出て、人がおのおの祭に訪れて、楽しむものであるという認識だった。子ども時分の私は、友達と祭にいくと、出店の水飴を食べたり、金魚すくいをしたりして、祭の時をすごした。御神輿を担いだりもした。大学生の頃まで、神輿を担ぐ機会を持った。子供の時の神輿の思い出といえば、肩が痛くなることと、神輿を担いでいろんなところを練り歩くが、途中、途中で寄った軒先でジュースや食べ物が振る舞われ、それを食べたことだ。それが楽しかった。

 先日(8月6日)は、地域の祭によってきた。祭の中心の場は神社や寺の境内ではなく、自治会館の広場がその場所となっている。私の子供の時の祭と変わりなく、出店が出ている。出店では、子供から大人まで、お目当てのものを買い求めている。地域のおじさん、おばさん、お兄さんやお姉さんがビールを片手に会話を楽しんでいる。子供たちが走り回っている。お母さんが大変そうだ。舞台が用意され、いろいろな余興がおこなわれている。それを見て楽しんでいる人びともいる。私の子供の時と変わりない祭の姿がそこにある。

 柳田國男は『祭のさまざま』で祭について話している。柳田は全国の祭についてすべて同じだったといっている。柳田は田舎から都会に出てきた。柳田にとって、今、住む地域は、故郷とは違う都会だった。当時、故郷を離れた者にとって、今、住む地域の祭に出逢うことが少なかったようだ。今は、いろんなイベントがあるから、当時とは違うだろう。町おこしが地域にとって重要な課題となっている。興味があれば、そういったイベントに行けば、祭気分を楽しむことが出来る。しかし、柳田が生きた時代のように、むしろそれ以上に、自分が住む所に最も近い場所の祭に出会う機会が少ない人も少なくないのではないか。

 戦後日本が荒廃から立ち直り、高度経済成長を実現して、先進国となり、そして現在に続く中で、世帯の変化があった。そうした変化とも無関係ではあるまい。

 自分の住む地域に近隣に夏であれば、花火大会や大きな祭やイベントがあれば、もちろん、それらに出会う機会は関心や興味があればたくさんある。情報化が発展した時代に生きているのである。


 私の両親は、祭の時期には、近所の祭の様子を見にいく。去年は、母と祭の様子を見にいった。今年は、両親とはいけなかったが、夕暮れに様子を見にいった。去年と同じように、かき氷と焼きそばを買い求め、食べた。

2016年6月14日火曜日

先日は、インターネットでライブ配信を楽しむ人の間で人目を引いた事件があった。

 インターネットでライブ配信を楽しむ人は多い。ライブ配信を楽しむ人が事件に巻き込まれることもある。最近では、公共施設などに爆弾を仕掛けたと予告メールが送りつけられたり、掲示板に書き込まれたりする事件が起きている。愉快犯のようだ。

 先日は、インターネットでライブ配信を楽しむ人の間で人目を引いた事件があった。

 報道によると、インターネットでよく配信をして、その配信にはたくさんの視聴者を集めていたよっさんが偽造通貨行使の容疑で警察に逮捕されて、取調べが続けられている。

 逮捕前日の本人のツイッターのつぶやきをみると、映画やドラマをインターネットで視聴できる動画配信サービスでテレビドラマをみていたことをつぶやいている。みていた作品は「銭ゲバ」という作品で、1日で全話見てしまったと本人はつぶやいている。そして、そのドラマを見ての感想をつぶやいている。その後用事があり外出して、家に帰ってきてから、配信をした。よっさんが逮捕された5月10日は、ツイッターのつぶやきはない。よっさんのツイッターからは、10日はどのようなことがあったかはわからない。

 よっさんが警察に捕まったといううわさがネットに広がり、ニコ生やツイキャスなどを使って、その話題に関して配信をする人がたくさんいた。私が、よっさんが警察に捕まったのを知ったのはそのような配信からだった。

 同じようにインターネットで日頃、配信をしていて、よっさんのことを知る、YMさんとNSさんが、車を使って、その様子をインターネットでライブ中継しながら、よっさんの住む地域に向かった。二人はよっさんが本当に警察に捕まったかどうかを確かめるという目的をもち、ネットでその様子を配信しながら、向かうという配信内容になっていた。配信では、二人は、よっさんの自宅と思われる所にいき、よっさんがいないことを確認していた。配信では、近所の犬の遠吠えが聞こえていた。その夜の配信は、YMさんのアカウントによる配信やその配信のミラー配信で見ている人がたくさんいた。二人は、10日の翌日の11日、早朝、常総警察署にいき、よっさんと面会をしたようだ。

 よっさんと面会をした人のうちの一人であるNSさんは、次のように話している。ツイッターで、(自分達は面会できたけど、)捜査の進展によっては接見禁止命令が出れば、弁護士以外は接見が出来なくなる。よっさんは、会社(よっさんがはじめた取組)のパートナーとの面会を優先したいという要望(希望)を持っていると話している。そして、NSさんは自分が持つアカウントでおこなったネットのライブ配信(511日深夜から12日未明にかけて)で次のようにも話している。よっさんが「察してください。寝耳に水ですよ」などと自分に話していることからも、容疑を否認しているといっている。報道でも、よっさんは「使った覚えはない」と容疑を否認していると伝えている。


 その後、偽造通貨行使の疑いで逮捕されたよっさんは、5月31日に、処分保留で釈放されている。釈放されたその日のよっさんのtwitterで本人が逮捕以来のつぶやきをした。インターネットのライブ配信を楽しむ人々の間でよっさんが釈放されたという情報がすぐに伝わっていた。よっさんは、twitterで31日にライブ配信をすると言ったが、配信環境が充分に整わず、31日の予定は中止している。よっさんが警察のお世話になって以来はじめての配信をして顔を見せたのは、6月1日となった。そこで、よっさんは、不本意である主旨を言っていた。

 今は、警察に逮捕される以前のようにまた配信をしている。



<参考>
最初に書いた元となった記事(2016年5月14日)

茨城新聞
2016510()
偽造1万円紙幣 行使で逮捕
2016年5月31日(火)
偽造通貨行使 処分保留で釈放 水戸地検

よっさんのtwitterのアカウント


2016年4月6日水曜日

3月29日は特別な日だったか?

 2016年の国会前の3月29日は、特別の日だった。集団的自衛権の行使可能とする安全保障関連法制が29日の午前零時に施行された。その法制の施行に抗議するために人々が集まった。

 私はその人々の抗議の様子をIWJさんのライブ配信でみていた。安全保障関連法制が国会で審議されていた昨年の夏は、法制案に抗議する人々が繰り返し繰り返し国会周辺に足を運び抗議を続けた。当時、メディアの世論調査ではこの法制案に反対する人が多いという結果が出ていた。もちろん法制案に肯定的な意見を持つ人もいた。29日には、法制の施行に抗議する人々とは違う意見を持つ人も国会周辺に行き、抗議の様子をライブ配信しようとした。

 そんな彼らは法制に抗議する人々に取り合ってもらえず、そして、警備する警察との間で一悶着があった。彼らはそれに対する不満をもったようだ。彼らがそういった意見を持つのは分からないわけではないが、彼らが国会前に抗議に集まる人々と警察の間で長い事行なわれてきた交渉についてあまりにも無理解であった。そういった彼らであるために、国会前で彼らはあのような目にあったのではないだろうか。

 2011年3月11日の東日本大震災では、東京電力福島第一原子力発電所が事故をおこした。それ以来、国会周辺では、抗議をするために人々が集まる象徴的な意味がそれ以前より強くなったといえるだろう。そういった意味合いにも彼らは理解が足りなかったといえるだろう。


 国会周辺では、警察が警備のために鉄柵を配置していた。国会周辺で抗議をする人々は、鉄柵が倒れたりしたら、怪我するおそれがあるために、考慮してくれないかと警察との間で交渉をしてきた。去年の夏、その鉄柵が倒されるという象徴的な出来事もあった。

 彼らは抗議の主催者と警察の間のやり取りも知らなかったようだ。背景をあまりにも無理解に、鉄柵が倒された出来事があった日の国会前の周辺の様子をライブで伝えようとした。そういった事があったために、29日には、彼らはライブ配信をする時にあのような目にあったのではないか。とはいっても彼らにとっては、あれはあれで満足できているのかもしれない。ちなみに、彼らは法制に抗議するために集まった人々の話を聞いてみたいという目的もあったのかもしれない。それだけが目的であれば、違う機会にでも意見をきく事は出来るだろう。

 安全保障法制に対して、個人はそれぞれの意見は持っているだろう。賛否はわかれるため、国会周辺の出来事を見る目は、それぞれ個人が持つ意見を反映したものとなるだろう。しかし、ライブ配信ではカメラに写った事をすべてみせる事が出来るが、背景を知らなければ、うまく伝えられない事もあるのではないかと、IWJさんの中継と彼らの録画を見比べて強く感じた。国会周辺で行なわれる抗議活動の背景についてあまり知らない人が、付け加えた物語はそんな感じだろうか(僕が事情通というわけではないですが、)?




(インターネット上で環境さえ整えば、誰もが情報を発信できる時代で素晴らしい事です。個人の資格でライブ配信を楽しむ人に厳しい事をいう必要ない事も多いですが、この記事にした配信者は、ライブ配信を楽しむ人々の間では「大手」と形容される事もあるように配信をたくさんの人が視聴する事もあります。また、ライブ配信する経験も多く持っています。普段は、エンターティメント系の配信を中心にしているようですが、政治や社会に関連するニュースとして伝えられる出来事を伝える時に批判的という事はどういう事なのかについて考えが足りないのではないかと感じ、記事にしました。)


〈記事の元になったつぶやき(Twitter)〉
https://twitter.com/KfrTofe/status/714983055451000832
https://twitter.com/KfrTofe/status/714981358578237440
https://twitter.com/KfrTofe/status/715115408894767104

〈参考〉
2016/03/29 安保法制の施行に反対する市民による国会前抗議行動(動画)(IWJ)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/293843